第1回セミナー (抄録)


熊本大学文書館・<水俣病>研究プロジェクト (HOME)



     細川一と水俣病事件    

Hajime Hosokawa, M.D. and the Minamata Disease Affairs

【発表者】  有馬 澄雄 Sumio Arima

【日時】 平成24年7月27日(金)19:30-21:00  【場所】 熊本大学法文棟4Fメディア演習室
  1956年に水俣病を発見し、引き続き汚染源内で原因究明に尽力したチッソ水俣工場付属病院長(当時)の細川一は、晩年に「公害対策」について次のようなメモを残している(細川メモ 1969)。
   

細川一

   

細川一 (1901-1970)

「私達の生活環境への素朴な要求は、きれいな空気と水、十分な太陽である。これらを公害現象は侵害している。/公害現象による住民の被害を人間の健康被害および疾病だけで評価することは十分でない。/生活妨害や物質損害にも重点をおいて考えなければならぬ。/またいわゆる公害現象と人の健康疾病との関係の明白な科学的追求には我々医師に大きな責任がある。この公害と人の健康や病気との関係にはまだあまりにも困難なことが多い。/このことが対策の遂行をおくらせる理由にしてはならない。/また、現象や症状を調べるだけではいけない。/何とならばこれらは事後の救済には役立つが十分な公害防止策には役に立たないと思う。/公害においては救済よりも防止の方がはるかに重要な仕事であるからである」
  本セミナーでは、細川一と水俣病事件の関わり(水俣病の発見/現地疫学調査/感染症の否定/汚染源内で原因物質研究/アセトアルデヒド工程廃液直接投与実験(ネコ400号)の成功と実験禁止/HI実験でアセトアルデヒド廃液によるネコ発症を再現/排液からメチル水銀を抽出(石原)/入江専務による研究内容の聴取/第一次訴訟において病床で証言し、人生を全うした)をひも解きながら、現在、環境倫理学的テーマとなっている「予防原則」について、すでに1969年にその必要性を示唆していた細川一の水俣病への「思い」について語ってみたい。細川一は、水俣病事件と関わった医師の中で、最も記憶さるべき人の一人であり、彼の思いは晩年のメモに余すところなく綴られている。